Creedence Clearwater Revival
Creedence Clearwater Revival。略称CCR。メンバーはジョン・フォガティ(vo,g)、トム・フォガティ(g)、スチュ・クック(b)、ダグ・クリフォード(ds)の4人。彼らは1960年頃から活動したトミー・フォガティ&ブルーヴェルベッツ〜ザ・ヴィジョンズ〜ザ・ゴリヴォックス〜の活動を経て1967年末にジョン・フォガティの提案でバンド名を「Creedence Clearwater Revival」と改め再出発する事からCCRとしてのキャリアは始まっている。それまでのブルーヴェルベッツ〜ゴリヴォックス時代は良くも悪くもブリティッシュ・インヴェイジョンに影響されたガレージロックをやりティーン向けに一発狙っていた所謂“Beatles雨後の竹の子バンド”の一つだった。しかしその活動にも行き詰まりが訪れ、名前を「Creedence Clearwater Revival」にした段階で「もうこうなったら流行を追ってる場合じゃない。俺の好きなR&R、R&B、カントリー前面に押し出して音楽をやればいいんだ」と開き直ったのが大正解。そして1968年7月のCCR名義での1stアルバム『Creedence Clearwater Revival』に収録されたデイル・ホーキンスのカヴァー「スージーQ」が全米TOP20ヒットを記録。折からのルーツミュージックブームにも合致した音楽性でバンドは一気に上昇気流に乗り69年には『バイヨーカントリー』、『グリーン・リヴァー』、『ウィリー・アンド・ザ・プアーボーイズ』の3枚のアルバムを立て続けにリリースし大ヒットを飛ばす。彼らはアルバム至上主義の時代となりつつあった当時からして珍しく多くのシングルヒットも獲得し続けた。しかし年3枚の傑作アルバムを出す勢いも70年12月もアルバム『ペンデュラム』で完全に失速。72年にロック史上最低のアルバムの一つに数えられる『マルティ・グラ』を発表し解散。彼らは人気絶頂当時さえ、ロックの最前線の主役ではなかった。所謂当時発生し始めたヴェルヴェット・アンダーグラウンドやヴァニラ・ファッジを筆頭として出来上がったアートロックやクラシックやジャズをふんだんに取り込み壮大な展開を見せロックを高尚な物として崇めたプログレッシヴロックのファンなどから徹底的にこき下ろされたバンドの筆頭だった。「3分の、あんな簡単な演奏で何の新しいアイデアも無い曲をやって売れやがって」ということである。当時から恐らくティーンエイジ・ファンクラブが大声で「今最もラディカルなのはいい曲を書き、演奏すること」と明言するまで位の間、“ただいい曲を書き、ただいい演奏をする”というアイデアはヒップなロックファンからしたら徹底的にアウトなアイデアだった。そのヒップなリスナーとの軋轢自体がソングライターであったジョン・フォガティのドラッグ依存を進行させバンド自体を破滅へ導く大きな要因であったというから価値観と言うものは恐ろしい。しかしそんな後味の悪い結末を迎えたCCRではあったが、バンドがロックの殿堂入りする祭に寄せられたブルース・スプリングスティーンの「当時、彼らは決してヒップなバンドでは無かったが、彼らは単に最高のバンドだった」という賛辞によって彼らの供養は果されたようだ。管理人とってのCCRというのは上にも書いているように本当にいい曲をいい演奏でやると言う見本のようなバンドです。コードは使っても3つか4つ、ガッチリ固まったバンドサウンド(このバンドのドラムはもっと評価されるべきだ)、暗喩や隠喩を全く使わず誰にでも理解できる正義感に満ちた歌詞。彼らは現在のまで脈々と続くUSインディの始祖的存在でもあり、全盛期のアルバムの価値は今でも全く風化していないと思われます。
『Willy & The Poor Boys 』
1、Down On The Corner
2、It Came Out Of The Sky
3、Cotton Fields
4、Poorboy Shuffle
5、Feelin' Blue
6、Fortunate Son
7、Don't Look Now (It Ain't You Or Me)
8、The Midnight Special
9、Side O' The Road
10、Effigy
1969年11月。その年発表された3枚のアルバムの内最後を飾る一枚であると同時にCCRが最高だった時期の最後のアルバムである。翌年の『コスモズ・ファクトリー』に於けるバンドのテンションも最高だが、カヴァーソングやパクリまがいの曲をふんだんに含んだアルバムは彼らの燃料切れを如実に表していた。で、この作品は彼らの中では最もゴスペルやカントリー、ソウル=R&Bといった“歌”の要素が強いアルバムと言える。アルバムジャケットで彼らは貧困から掃除用具や洗濯用具を楽器としたカントリージャグバンドに扮し当時ヒップで無いと言う自分たちの評判をおちょくった様な感がありますが、これもジョン・フォガティの「ロックンローラーはアーティストなどではなく労働者なんだ」という主張に基づいた物でしょう。実際当時のロックはドンドンアート化が進み労働者階級のもから中産階級の若者のサブカルチャーという文脈が完成しつつありましたからその反発として自分たちがどんな苦しい貧困に耐えながら音楽活動をしてきたかという面を強調したかったのではないかと思われます。これはザ・バンドのロビー・ロバートソンの「(ザ・ホークス時代を振り返りつつ)君たちは生きるための犯罪をしなくていいと言うことが、どれほど幸せか理解していない」という発言と類似しております。さてアルバムの内容ですがM1はヒットシングルでもある名曲。冒頭に書いたようにカントリー、R&B、ゴスペルの要素が絶妙に合わさった実に軽妙なリズムにあわせてアルバムタイトルのWilly&The Poor Boysの演奏している様子が歌われる。M2はこのアルバムでも数少ない軽快なロックンロール。この曲に於けるダグのスネアの音は素晴らしい。M3は一気にカントリー臭くなる。牧歌的な曲調にゴスペルの影響を受けた歌唱法が実にマッチしている。夕暮れを眺めながら聴きたい曲だ。M4はジャケット通のカントリージャグバンド編成によるインスト曲。曲自体は明るいのだがハープの響きがどうしても切ない。M5はソウルの色合いが非常に強い曲。ジョンの節回しやコーラスのつけ方が実に黒い。ブルーアイドソウルといってもいいだろう。M6はM1のシングルのB面だった曲。CCRならではのギターロックだ。しかしギターも抑え目で、フェードアウトのためかどこか地味な印象を与える。M7も実に地味な曲だがジョンのシンプルなコード使いに乗せるメロディの素敵さを味わうにはもってこいの曲。M8はアメリカンフォーク(伝承歌)のカヴァー。曲自体は穏やかな曲だがこのアルバムのモードに添う様に実にソウルフルな味わいにアレンジされている。M9になると彼らのブルージーな面を表すインスト曲。やはりこのバンドのギターサウンドというのは実に痺れる。ラストM10はアルバムの要素を全部ぶち込んだかのような大曲。ちなみにタイトルは批判や嘲笑を込めて描かれる肖像画のことで、やはりジョン・フォガティは当時相当上で書いたようなヒップなファンから評価されない事を悩んでいたようだ。以上全10曲、本作は彼らの全盛期を締めくくる大傑作アルバムであり、図らずも彼らの姿勢と抱えた病理を一気に噴出してしまった問題作ともいえる。(2004年12月18日)