Buffalo Springfield
 Buffalo Springfieldは1967年2月にデビューしたスティーヴン・スティルス(g,vo)、ニール・ヤング(g,vo)、リッチー・フューレイ(g,vo)、ブルース・パーマー(b)、デューイ・マーティン(ds)の5人からなる60年代アメリカ西海岸を代表するロック・バンドの一つであります。このバンドはセールス的にはシングルヒットを一つ飛ばした一発屋に過ぎません。しかしこのバンドはメンバーが後に大ブレイクするCSN&YやPOCOの中核メンバーを抱えていた事で大きな再評価を受けました。活動期間は66年〜68年までの2年間でアルバム3枚という短いものではありますが、残した音源はバンドの緊張感が張り詰めたとてつもなく濃厚なものであると言うのが特徴。フォーク、カントリー、ブルース、R&Bなどを出自にもつメンバーが時代に流されつつも独自のロックンロールを作り上げていく過程は非常に興味深いものがあります。日本でこのバンドを聴くきっかけになる事として思い浮かぶのは、二ール・ヤングのファンで聴いた、もしくは「はっぴいえんど」がフェイバリットに挙げていたから興味を持って聴いたと言うのが一般的だと思います。僕は完全に後者です。Beatlesを最早洋楽という範疇で括れないバンドであるといするのなら私が初めて買って聴いた洋楽アルバムはこのバンドの「アゲイン」で、私が一番最初に洋楽で60〜70年代のウエストコーストの音楽を深く聴くようになったのはこのバンドの影響です。
『BOX SET』
 これは2001年8月22日に発売したニール・ヤング編纂のBuffalo Springfieldのキャリアを“ほぼ”網羅した4枚組みのBOXです。私は完全に後追い世代なのでわからなかったのですが以前から(10年以上前)出る出ると噂はあったようでこの発売は待望の、と言った感じだったようです。にしてもオリジナルアルバムが3枚しかでていないバンドが何故4枚組みのBOXを出せるのか不思議ですがその内容はとてつもなく濃いです。基本的にこのバンドはスティーヴン・スティルス、ニール・ヤング、リッチー・フューレイという後の活躍を見ても稀有な才能をもった3人が火花を散らしあいながら曲を作っていたのでこのぐらいの量と濃度になるは当然であったのでしょう。Disk-1はデモ音源が中心のアコースティック色の強い印象ですがこの時点で既に緊張感が張り詰めています。アコースティック色が強くとも何故か旧態依然としたフォークは感じさせないものがあり、鋭角的な感覚をもたらします。この辺りはボブ・ディランの「アナザー・サイド・オブ・ボブディラン」にある雰囲気と似てるでしょう。Disk-2になると1枚目のアルバム「Buffalo Springfield 」と2枚目のアルバム「Again」の音源とその未発表ヴァージョンを収めたもので、所謂当時のサイケデリックロックやライブ重視をしたかのようなアグレッシヴなナンバーも増えてきます。Disk-3はDisk-2に入りきらなかった2枚目のアルバム「Again」からの音源とラストアルバム「Last Time Around」の音源とそのデモ音源でグループは終焉に向かいながら益々充実の一途を辿っていたのがまざまざと理解できる内容になっています。そして最後のDisk-4はなんと1枚目のアルバムと2枚目のアルバムがオリジナルの曲順どおりに並んでいます。先に書いたようにこのBOXの監修はニール・ヤングです。ニールは2枚目のアルバム以降はほとんど脱退状態で、3枚目のアルバムは自身の曲も他のメンバーの曲も寄せ集めであり、オリジナルと考えたくないと言うニールらしい理由によるものなのでしょう。以上のようにこのBOXは大変濃度の濃い作品ではありますが、バンドの音源の全てが網羅されている訳ではなく未収録の音源(名曲「Bluebird」のロングヴァージョンや3枚目のアルバムからも1曲漏れている)やDisk間で被ってる曲もチラホラあり納得に行かない点も多々有ります。しかし音質の面やこのバンドの本質というものをバンド内の逸れ者であったニールが冷静見た結果、Buffalo Springfieldのアンソロジーとしてこれ以上無い作品が出来たのであろうと思います。切れの良いフォーク・ロックが聴きたいなんて人には死ぬ程お薦めの1箱であります。