Pavement
Pavement。1988年スティーヴン・マルクマス(vo,g)とスコット・カンバーグ(g,vo)が中心になって結成。彼ら二人が使用していたスタジオの親父ことギャリー・ヤング(ds,当時36歳)が強引に加入し3人でしばらく活動後、マーク・イボルド(b)、ボブ・ナスタノヴィッチ(g)が加入し1stアルバム『Slanted & Enchanted:』(92年)をリリースし、全世界に“ローファイ”なる気だるいヴォーカルによれ気味のメロディを主体としたノイズギターポップを流布。この後すぐにギャリーは首になり、代わりにスティーヴ・ウェストが加入し、解散まで不動のメンバーとして活動。94年には『Crooked Rain, Crooked Rain』で新世代のギターポップバンドとしての評価が確立し、以降は要注目アーティストとして活動を続けるも、6枚のアルバムを残し99年に解散。ペイヴメントの解散はリアルタイムの人にも評価が確立した後で好きになったやや後追い気味の僕の様に、なんか妙に寂しかったという意見をもっている人が多いと思う。それはぺイヴメントがメインストリートから外れながらもホントにただの良いメロディを書いてるただのバンドだったからだ。80年代末から90年代初頭アメリカに表れたオルタナティヴと言う文脈の中でギターポップに属すと思われるバンドの殆どは基本的な路線を変えずに(変えられず)消えていってしまう。この2004年にもUS最強の現役メロディメーカー、ロバート・ポラード率いるGuided by Voicesがあっさりと解散してしまったように、レディオヘッドがアルバム2枚で方法論を変え大成功したように、バンドが何の変哲も無いグッド・ソング、グッド・メロディに纏わる方法論を貫き通すのは相当な気合いと忍耐が必要だと言う事を思い知らされたバンドでした。
『Slanted & Enchanted』
1、Summer Babe [Winter Version]
2、Trigger Cut/Wounded-Kite at :17
3、No Life Singed Her
4、In the Mouth a Desert
5、Conduit for Sale!
6、Zurich Is Stained
7、Chesley's Little Wrists
8、Loretta's Scars
9、Here
10、Two States
11、Perfume-V
12、Fame Throwa
13、Jackals, False Grails: The Lonesome Era
14、Our Singer
1992年発表の1st。全ての始まり、なんて書き出しが一ミリも似合わない傑作中の傑作。ここを基点としアメリカのインディポップシーンは隆盛を極め出す。Matador、Subpop、Kのアメリカンインディポップ御三家と扱ってなんの差し支えも無いレーベルは各自必ずと言っていいほどゴキゲン(佐野元春風)なローファイ(=最高のギターポップバンド)バンドを抱えていた。とにかくこの傑作は“ダルい”。ヴォーカルから演奏に関してもレコードでは常にゆ〜るゆるだぁ!ファズがだらだらとかかるストラト、親父が必死にアルコールを汗に変えて叩くドラム、ギターの歪みでまるで存在感の無いベース、そして寝起きでコーヒーもまだ飲んでないような声のヴォーカルが鼻歌を混ぜながらシャウトしたりする。そしてそのヴォーカルが紡ぐ歌詞も全く意味不明。文学的、とされるが所謂単語の並べ方が文学に影響を受けているという話だろう。単語を選び出すセンス自体はかなりおざなり。いや、なんかここまで書いてるとまるで駄目バンドみたいですが、こういった負の要素を抱えながらも平然と良い音楽として成立していたことが、まさに奇跡だったんですよ。これに全世界の音楽やりたい若者がどれほど勇気付けられたかは想像に及ばないほどでかいと思われます。ちょっとニルヴァーナじゃ表現がハード/剥き出し過ぎるよぉ、なんていう人たちにとっては神的存在だったのではないでしょうか。内容的にはM1に尽きると思う。この曲が好きになれればPavementは大概好きになれると思う。呂律が回らないヴォーカルにやけに美しいメロディライン。ひたすらノイジーで投げやりなギターサウンド。と、いつも通り全曲解説やろうかと思いましたが、なんかめんどくさくなって来た(笑)どーでも良いじゃん?解説なんて。そんなメンタリティを持つ人間のに許された至高のオルタナ・ポップの傑作。ちなみに2002年に10周年記念増強盤が出ました(輸入盤のみ)。彼等のカオティックなライヴが聴ける逸品ですよ。ま、そんなことどうでもいいやぁ。