サニーデイ・サービス
 サニーデイ・サービスは1995年に曽我部恵一(vo,g)、丸山晴茂(dr)、田中貴(b)の3人でメジャーデビュー、スタジオアルバム7枚を残し2000年末解散。サウンド的にははっぴいえんどやURCフォークや60年代後半アメリカ西海岸、同じく60年代イギリスのガレージ、プログレなど実に表情豊ではあるが最終的にはソングライターの曽我部恵一が紡ぎ出すメロディが最大の魅力で老若男女問わず受け入れられるポップ・ロックという形に集約される。実はオリジナルサニーデイ・サービスなるものも存在し、1992年にこの3人に加えもう2人のメンバーが在籍しインディで活動していました。オリジナルサニーデイ・サービスの音源は所有しておりますが、ハウス(というか80年代末のマンチェ)とネオアコが基調のポスト・渋谷系サウンドで、あまりに95年以降と違うのでここでは『若者たち』以降のサニーデイ・サービスを扱っていきます。さて、サニーデイ・サービスというバンドの名前を聴いた時あなたはどういうイメージが広がるでしょうか?「コーヒーと恋愛」でしょうか?はたまた「音楽好きのインテリ文系大学生」でしょうか?「ポストはっぴいえんどバンド」でありましょうか?いずれにせよサニーデイ・サービスというバンドは最後まで己が作り出した色々なイメージに苦しんでいきました。現在ソングライターの曽我部恵一がありのままにソロ活動している姿はサニーデイ・サービスの呪縛から解き放たれたかのような感すらします。しかしサニーデイ・サービスでしか作りえなかったものというのも非常に大きく、サニーデイ・サービス以降という言葉やシーンすら許さない一種の孤高のバンドであったともいえると思います。管理人は非常にこのバンドが好きで、アコースティックギターを持とうと思ったキッカケのバンドでもあります。
『東京』
1、東京
2、恋におちたら
3、会いたかった少女
4、もういいかい
5、あじさい
6、青春狂走曲
7、恋色の街角で
8、真赤な太陽
9、いろんなことに夢中になったり飽きたり
10、きれいだね
11、ダーリン
12、コーヒーと恋愛
 1996年2月リリースのセカンドアルバム。デビュー作である前作『若者たち』は「はっぴいえんどを自分達でやったらどうなるか?」という事だけで作ったとの旨を曽我部さん本人が語るように、いわゆるサニーデイの前にはっぴいえんどを知ってる者にとっては「あ〜わかるわかる!こういうのやりたいよな」思え、知らない者にとっては新鮮な世界観であったと思う。管理人は前者ではっぴいえんどが先だったのですが、あまり無理なくこの世界観に入れました。そしてこの『東京』というアルバムではそのはっぴいえんど的な世界観をいかにアウトプットからインプットにするべく作られたかのようです。1曲目「東京」はスリーフィンガーのアコースティックギターと薄く重ねられたヴォーカル、ピアノ伴奏だけのシンプルなナンバーだがこれだけでもう違う世界へと行ける。そして2曲目は初期サニーデイ・サービスを代表する名曲「恋におちたら」が収録。この曲によってサニーデイ・サービスのイメージは決定付けられます。この曲以降も文学的な歌詞とストリングスが流麗な「あじさい」、曽我部恵一のダンスミュージックやヒップホップ、ひいてはサブカルチャーへの愛も感じさせるサニーデイ・サービスの「核」の部分がよく出た曲「青春狂走曲」、はっぴいえんど人脈である駒沢結城がペダルスチールギターの音色をメロウに聴かせる「いろんなことに夢中になったり飽きたり」等々沢山の名曲に囲まれたアルバムであります。楽曲もさることながらこのアルバムで特に印象的なのは歌詞。「あまり歌詞は長い時間考えない」と曽我部氏本人はとあるインタビューで語っていたのは有名な話だが、ここまで普遍的で瞬間的な感情をこめられると言うのも凄いと思う。そして何よりこのジャケット。ロックやポップミュージックという外来の文化をここまで日本寄りに引き寄せたという点でこのアルバムは多くの日本人が記憶に残すべきアルバムであると思います。
『サニーデイ・サービス』
1、Baby Blue
2、朝
3、NOW
4、枯葉
5、虹の午後に
6、Wild Glass Picture
7、Pink Moon
8、星を見たかい?
9、雨
10、そして風が吹く
11、旅の手帖
12、Bye Bye Blackbird
 1997年10月リリースの4枚目のオルジナルアルバム。2枚目のアルバム『東京』でサニーデイ・サービスはフォークやソフトロック調の色彩を持った日本的なメロディを鳴らすバンドである、という認識が一気に広まりそれなりにファンを獲得し“喫茶ロック”なる文脈の誕生にも一役買った。しかし『東京』の後に出したシングル「ここで逢いましょう』というニール・ヤングが日本に現れたかのような軋むギターソロが延々続くナンバーで『東京』で付いたファンを退かせてしまった。後に曽我部氏が「これでミッシェル・ガン・エレファントにファンを取られた(笑)」と語っていたのが印象的だ。そんなシングル経て翌97年に出た3枚目のアルバム『愛と笑いの夜」は名曲・佳曲の多いアルバムながらも、ロックとフォークやソフトなメロディと間を行き来したやや混沌とした仕上がりになった。そしてその後2枚のシングルを挟み9ヶ月後(!)に出されたのがこの4枚目のアルバム『サニーデイ・サービス』である。『愛と笑いの夜』は今でもファンには最高傑作の呼び声高い傑作であったが、ラスト3曲が名曲な事に少しだけ助けられているアルバムであるというのが私感である。アルバムは1曲目「Baby Blue」からもう溜め息が出るような展開。アコギに歌、ドラムにベース、ピアノが寄り添うだけの典型的なサニーデイ・サービスナンバーであるがたまったリズムのせいもあってか、曲の雰囲気がもはやこの世のものではない。アルバム全体に言えることだが曽我部恵一によるギターの音とプレイの両方が素晴らしい。先ほども書いたが曽我部恵一という人はやはりギタープレイにニール・ヤングの影響が濃厚であると思う。故に特にテクニカルな演奏は無いが「そして風が吹く」での調整の効かないトレモロのギターソロや「Pink Moon」の独特の間合いのソロは聴いたり自分で弾いたりするとギターの生み出す快感というものに触れられる。そしてこれは書くべきどうか迷ったがあえて書くとサニーデイ・サービスというバンドはやはり曽我部恵一のワンマン・バンドであった、と思う。それはやはり他のメンバーのプレイが我々素人から聴いてもどうにもスタジオミュージシャン然としてしまっている(自分がファンだけに書いてて悲しくなっちゃうんですけどね)。しかし本作はサニーデイ・サービス唯一と言ってもいい位のリズム隊の演奏と歌のバランスが良い。いわゆる「バンド感」がこの作品にある。単に楽曲の良さやアルバムのまとまり具合だけでなくそういった意味でもこの作品を私は最高傑作と考えている。